あまりメリットがない Windows RT

Windows RT は、Windows 8 のエディションの一つです。従来のパソコン向け Windows 製品と違って、ARM（Advanced RISC Machines）プロセッサーに対応しています。

ARM プロセッサーとは、ARM 社が設計を行ったプロセッサーであり、サイズが小さくて消費電力が低い特徴を持ち、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末、ゲーム機等、様々なモバイル機器に採用されてきました。

既にパソコンで普及しているプロセッサーは、インテル社や AMD 社が設計したプロセッサーであり、こちらは x86 プロセッサーと呼ばれています。

従来のパソコン向け Windows 製品は、この x86 プロセッサーに対応しており、従来のパソコン向け Windows 製品が対応するプロセッサーの主流は、この x86 プロセッサーであり続けると思われます。

Windows RT が ARM プロセッサーに対応した事で、タブレット PC 等のモバイル機器は、よりサイズを小さく薄く軽くでき、消費電力の低下につながります。

しかし、2013年4月1日時点までに発売された Windows RT 搭載タブレット PC と、Windows 8（無印版）等を搭載したタブレット PC を比べると、特別に薄くて軽くはなく、バッテリー駆動時間は長くありません。

その理由は、x86 プロセッサーにサイズが小さくて消費電力の低さに優れたプロセッサーが登場したからです。特にインテル社の Atom というブランド名が付いたプロセッサーは、サイズの小ささ、消費電力の低さに優れています。

Windows RT には特にメリットがないだけなら、選択肢の一つとして残しても良いでしょうが、Windows RT には最大の特徴と言ってもいいくらいのデメリットがあります。それは、デスクトップアプリが使えない事です。

デスクトップアプリは、Windows のデスクトップ上で動作するアプリケーションです。従来のパソコン向け Windows 製品で使われてきたアプリケーションであり、今後もパソコン向け Windows 製品で使えるアプリケーションの主流であり続けると思われます。

Windows 8 の登場と共に、Windows ストアアプリと呼ばれるアプリケーションが登場しました。Windows ストアアプリは、Modern UI と呼ばれるユーザーインターフェース上で動作するアプリケーションです。

Windows RT では、この Windows ストアアプリのみが使えます。ただし、Windows ストアアプリなら必ず使えるわけではなく、Windows RT に対応していない Windows ストアアプリは使えません。

Windows RT でも使える Windows ストアアプリが豊富にあれば問題になる可能性は低くなりますが、Windows ストアアプリが登場してから十分な期間が経っていないので、まだ豊富とは言えません。

まだまだ多くの人が、Windows RT でも使える Windows ストアアプリだけでは不十分で、デスクトップアプリが必要になると思われます。

デスクトップアプリが使えないデメリットを打ち消すほどのメリット、例えば価格が安い等のメリットがあれば良いのですが、特にありません。

価格に関してですが、Windows RT 搭載タブレット PC は、あまり安い印象を受けません。恐らく、パソコンメーカーに卸す際の価格は、Windows RT では特別に安くなっているわけではないからと思われます。

今後、Windows RT でも使える Windows ストアアプリが豊富になれば、デスクトップアプリが使えないというデメリットは薄れますが、あまりメリットがない事に変わりはありません。

x86 プロセッサーよりも、ARM プロセッサーの小型化と低消費電力化が進むか、Windows RT の値下げが行われれば、Windows RT のメリットは大きくなりますが、x86 プロセッサーの技術進歩は早く、OS で莫大な収益を上げてきた Microsoft 社が簡単には値下げするとは思えません。

このままでは Windows RT は普及しないでしょうから（2013年4月1日時点では普及しているとは言えない）、何らかの大きなメリットが出るようにすると思われますが、そうしなければ Windows RT は失敗作に終わると思われます。